大田区

「学芸員イチオシの一品!」第8弾のご案内
更新日:2020年9月25日
「学芸員イチオシの一品!」第8弾
 今回は第7弾!大田区立郷土博物館には、開館以来収集してきた多くの資料が保管・展示されています。ここでは、考古・歴史・民俗という各分野の学芸員がオススメする資料を取り上げて、資料が持つ魅力や見どころについて紹介します。

[注意]資料の画像の二次利用や無断転載は固く禁じます。資料や画像のことにつきましては、大田区立郷土博物館までお問い合わせください。

 10月の大田区の伝統行事と言えば、本門寺の御会式(おえしき)を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか―。今回は本門寺が立地する「池上」をテーマにして、各分野から資料を選びました。

【考古】十二天遺跡(中央八丁目)1号井戸址 井戸枠用材(いどわくようざい)(平安時代前期(9世紀後半))
テキスト 井戸枠の用材
井戸枠の用材
テキスト 1号井戸址の構造(イメージ)
1号井戸址の構造(イメージ)
 井戸の穴の崩落を防ぐ土止め用の枠を、井戸枠と呼びます。この井戸枠は、縦長の板を方形に組む構造で、板は手斧で表面を整えられ、ほぞ穴もみられるため、建物の部材を転用したものと考えられます。井戸の穴と板とのすき間は、砂とシルトを交互につき固めて埋め、井戸枠を固定していました。井戸の底部付近からは、容器として使われたヒョウタンの果皮や、浄水装置として敷かれた多数の礫が出土しました。
 本遺跡は、池上本門寺から約1キロメートル南東の呑川沿いの微高地上に位置します。9世紀代の井戸の他、掘立柱建物や役人が着けたベルトの飾り金具も見つかっており、律令国家の地方支配の末端を担う役所的な場と推定されています。
[考古担当:林正之]

【歴史】川瀬巴水「池上本門寺」(昭和6(1931)年1月作)
テキスト 川瀬巴水「池上本門寺」(昭和6年1月作)
川瀬巴水「池上本門寺」(昭和6年1月作)
テキスト 写生帖第30号「池上本門寺」昭和5年11月11日朝
写生帖第30号「池上本門寺」昭和5年11月11日朝
 川瀬巴水は大田区に居住した木版画の絵師です。彼の作品は、生涯を通じて600点以上出版され、それは常に持ち歩いていた写生帖をもとに制作されました。「版画を作るようになってからは、版画としての出来上がりを予想して、一木一草も除けなくてよいところを選んで写生するようになった。そのうち見る風景が版画に見えるようになって来た」(楢崎宗重「川瀬巴水 版画とその生涯」)と語ったように、残された写生帖には、完成度の高いスケッチが数多く残されています。
 本作は、昭和5(1930)年11月の朝にスケッチされており、作品の制作過程で雪景色に変更されたことがわかります。特徴的な松の枝ぶりは写生に忠実に描かれました。一方で、鮮やかな着物姿の女性達の姿が描き加えられ、静かな雪景色に彩りを添えています。スケッチと作品を比べることで、作品制作の過程を垣間見ることができます。
[歴史担当:眞坂オリエ]

【民俗】十界(じっかい)曼荼羅
テキスト 十界曼荼羅
十界曼荼羅
テキスト 【参考】区内の題目講(『大田区の文化財第12集 大田区の民間信仰』より)
【参考】区内の題目講(『大田区の文化財第12集 大田区の民間信仰』より)
 池上本門寺は日蓮宗の大本山として広く知られていますが、日蓮宗檀徒たちの集まりの一つに題目講があります。題目講では、法華経や「南無妙法蓮華経」の七字題目を唱えることを目的にしており、池上を中心に展開しました。今回紹介する十界曼荼羅は、題目講の行事で用いられたものです。
 十界曼荼羅は日蓮宗における本尊の役割を果たしていることから、題目講の時には十界曼陀羅の掛軸をかけます。「南無妙法蓮華経」の大書を中央に配置し、その周りを諸尊や十界(迷いと悟りの世界)の名称が囲んでいます。七字題目の文字の筆端が髭(ひげ)のように伸ばして書かれていることから、別名「髭題目」とも呼ばれており、筆線は万物を照らす仏法の光明を表しています。
[民俗担当:乾賢太郎]

お問い合わせ
大田区南馬込五丁目11番13号
電話:03-3777-1070
FAX :03-3777-1283
メールによるお問い合わせ


[0]戻る
[9]トップに戻る
Copyright(C) Ota City All rights reserved.