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羽田空港対策特別委員会中間報告

ページ番号:876543385

更新日:2007年3月8日

平成19年3月9日

1 調査事件
(1)羽田空港の再拡張事業について
(2)羽田空港の跡地利用について
(3)羽田空港の空港機能について

2 調査報告
 本委員会は、羽田空港の再拡張事業、及び跡地利用並びに空港機能についてを調査項目とし、審査並びに調査を行ってきた。これまでの調査結果については中間報告を行っているので、主に昨年6月以降の調査状況を報告する。

(1)羽田空港の再拡張事業について
  羽田空港の再拡張事業は、約97haの公有水面の埋立てを行い、新たに4本目の滑走路等を整備し、年間の発着能力を現在の29.6万回から40.7万回に増強して、発着容量の制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、増大が見込まれる国内空港需要に対応した発着枠を確保したうえで、国際定期便の受入れを可能とするもので、2009年末の完成を目指しているものである。
 この事業は、環境影響評価法に基づく対象事業に該当することから、昨年の環境影響評価準備書を経て今回環境影響評価書が作成された。
  
ア 再拡張事業に係る環境影響評価について
 東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価書は、環境影響評価法に基づき、平成18年6月20日から7月19日まで公告・縦覧がなされた。
 この環境評価書は、昨年作成された環境影響評価準備書とほぼ同内容だが、委員会では再拡張事業区域周辺の自然環境に与える影響について危惧する意見が出された。
 また、供用後も含めた大気質環境についても質疑が行われ、再拡張事業がもたらす環境への影響を最小限にとどめるよう環境保全への配慮を強く求める意見が出された。

イ 公有水面埋立てについて
 平成18年第3回定例会において、公有水面の埋立てに関する議案が当委員会に付託された。この議案は公有水面埋立法に基づき、新滑走路建設に伴う公有水面埋立ての承認に際して、東京都知事が大田区長に意見を求めてきたものである。
 委員会では、環境整備も含め、諸課題を解決できていないままに公有水面を埋立ててしまうことは問題がある。河口に埋立等による滑走路造成という前例のない事業に対し、充分な環境予測を行ったうえでなければ推進できないと考えるとの意見や、羽田空港も将来の航空需要に対応した環境を整える必要があり、速やかに事業を推進してもらいたい。また、工事に関しても、安全性が確保されるよう、常に監視していただきたいとの意見が出された。本議案は賛成者多数で原案どおり決定した。
 新滑走路の建設については、委員会としても環境に与える影響について監視していかなければならない。

(2)A滑走路北側離陸左旋回(以下「左旋回」と記す。)について
 左旋回は、平成12年の新B滑走路供用後の運用のなかで、朝7時、8時台の混雑緩和のために提案されたものである。その際、使用機材についてはYS-11並の低騒音ジェット機に限るなど、左旋回を行う際の条件を協議し、国土交通省(当時運輸省)と確認を行った。
 しかし、実際の左旋回における航空機騒音測定値は、当初の予測を超えて、80dBを超えることもあることから、空港周辺住民に騒音被害を与えている。また、この左旋回は離陸直後に旋回して市街地上空を飛行する事から、騒音問題に加えて安全性の面からも空港周辺住民は危険にさらされている状況にある。2009年末の新滑走路供用時には、左旋回をその拡大した容量のなかに吸収すべきであるとの意見があった。
 また、航空機騒音の中では、ゴーアラウンド(着陸復行)による影響も増加している。この理由としては、気象条件によるものやバードストライク(鳥の吸い込み)など自然的要因のものと、先行機の滑走路離脱遅れや先行着陸機の部品落下による滑走路閉鎖などの人的要因のものとがある。   
 このゴーアラウンドは、安全確保のためやむを得ないものもあるが、昨年に比べ増加している状況から、区は国に対して、改善について申し入れを行った。
 今後も空港容量の拡大により、さらに発着便数が増えることから、当委員会としても継続して注視すべき課題である。

(3)空港跡地について
 国は空港跡地について、当初概ね200haから77ha、さらには、平成14年10月に国際化に向けた施設配置により53haと内々の提示をしてきた。
 大田区は、17年4月に空港跡地利用計画案を公表した。その後、国や東京都にこの跡地利用計画案を示し、今後の利用計画策定の促進について申し入れを行った。国は昨年12月の羽田空港移転問題協議会で、正式に跡地の範囲と面積53haを提示した。大田区長は、羽田空港を航空機騒音対策、安全対策、航空機排出ガス対策、景観対策等に十分配慮した先進的空港として整備するため、海老取川沿いを親水緑地として整備するよう国に要望書を提出した。委員会においても、海老取川沿いの整備は重要な課題であるとの意見があった。また、国際線導入に向けた動きが具体化していく時期を迎え、委員会としてもさらなる議論を深め、積極的に調査・研究を重ねるべき課題である。

(4)神奈川口構想について
 神奈川口構想における連絡路の整備については、東京湾臨海部の再生という広域的観点に加え、空港周辺地域の生活環境と安全の確保という観点からも、国道357号線多摩川トンネル部の早期整備のほうを優先すべきとの認識が示された。今後、国に対して多摩川トンネル部の早期着手を働きかけていく必要がある。

(5)行政視察について
 当委員会では、8月3日及び4日に、2月16日に開港した神戸空港と、大阪空港に隣接する伊丹市の空港周辺緑地(伊丹スカイパーク)を視察した。
 関西圏にはすでに大阪国際(伊丹)空港、関西国際空港があるが、第三種空港で建設・運営を市が手がける神戸空港は、環境上の制約がある大阪国際(伊丹)空港の負担を軽減し、関西圏の国内航空需要を分担し利用者の利便性の向上に資する役割を担っている。視察時には、敷地内に未着手の部分もあり、今後は環境創造型護岸や人工ラグーンの整備を進め、環境に配慮し市民が気軽に利用できる空間を創造していくとしている。また、空港島にレクレーション性の高い施設の導入が計画されていることは、跡地利用検討の一助となる視察であった。
 伊丹スカイパーク(大阪国際空港周辺緑地)は、住宅地への騒音緩和のための緩衝緑地として整備されている施設である。18年7月9日に一部が公開され、平成20年にフルオープンする予定になっている。騒音が住宅地に影響しないよう細部にわたって計算がされており、地域住民の憩いの場としてふさわしい公園となるよう整備が進んでいる。非常に暑い日の視察となったが、それでも数人の市民の方々がベンチに座り、目の前を離発着する飛行機をながめていた。緩衝緑地の整備について具体的なイメージがつかめた視察となった。
 10月23日には、羽田空港事務所内において、空港長より空港の概要について説明を受け、その後、新滑走路建設予定地及び羽田空港(跡地関連)用地を視察した。

(6)意見書について
 委員会では、羽田空港周辺に係る諸課題の解決に向けて、国に積極的に要請すべきであるとの意見が出され、平成19年第1回定例会にて意見書を提出することとなった。
 委員会での審議の結果、国土交通大臣に対し「羽田空港周辺の都市基盤整備に関する意見書」として、
ア 羽田空港の周辺環境の保全と安全確保に万全の対策を講じること。
イ 左旋回は、再拡張による発着容量拡大までに廃止すること。
ウ 都市計画道路である国道357号線の事業実施計画について、早期に着手すること。
エ 既成市街地への交通車両流入抑制対策を充実させること。
オ 再拡張後の国際線運航距離制限について、距離拡大につとめ国際線就航枠の拡大を図ること。
カ 海老取川及び多摩川沿いを親水緑地として整備すること。
キ 地域経済の活性化と地元産業の参画機会の拡大に配慮すること。
 以上の内容の意見書を平成19年3月5日付けで提出した。

 以上、当委員会の調査経過、審査経過を述べてきたが、羽田空港は、再拡張事業による新滑走路整備に伴う空港容量の拡大や、国際線の導入、跡地利用の具体化、また左旋回やゴーアラウンドによる騒音被害など緊急な対応が求められる課題が山積している。
 当委員会は、今後も国や都に対して地元住民の思いを代弁し、その実現を目指していかなければならない。
 最後に、空港との共存共栄を望む地元住民の願いと再拡張事業による羽田空港の発展とが両立するものとなるよう切望して、中間報告とする。

本文ここまで